メンタル疾患(精神疾患)になって遅かれ早かれ訪れる「お金の問題」についてです。
体調が悪くて仕事を休みがちになったり、休業手当をもらいながらしのいだり、失業中だったり、生活保護をもらいながらなんとか生活をしている方もいるはずです。
精神疾患に限らず何かしらの病気になると、「医療費がかかる」ことと「収入が減る」というダブルのお金問題がでてきます。
そしてあとひとつ「浪費する」ということについて私の思うことを書こうと思います。
メンタル疾患になったらお金に困る理由
まずは、精神疾患になると体調が不安定になりやすいので、シフトが決まっているような「普通の仕事」をするのが難しくなります。
朝起きれない、身体が動かない、電車に乗るのが怖い、頭がまわらない、、、
そんな状態だと朝から出勤して仕事をこなす、ということができなくなります。
まずは心療内科とかのクリニックに行って薬(主に向精神薬)を処方されて、薬を飲みながら仕事に行きます。でも、どんどん体調が悪くなっていくにつれ仕事も休みがちになっていく。有給休暇も使い切ってしまうと、職場にもよりますが、一旦休業するか、仕事を辞めるしかなくなります。
仕事ができずに収入が減る
休業手当や失業手当もいつまでももらえるものではないので、いずれ収入が無くなってしまい、お金のことで行き詰まります。
親がまだ仕事をしていて金銭面的に頼れそうなら頼るのもあり。だけど多くの人が親兄弟や親族にも頼れないのが現状だと思います。
結婚していて共働きだったとしたら、ご主人や奥さんの収入一本になる。なんにせよ働けなくなって収入が減るということは、多くの人が経験していることです。
医療費にお金がかかる
最低でも月に一回のペースで通院することになると思います。保険で3割負担だとしても、毎月何千円もお金を使っているはずです。
不調のせいで病院以外にも、整体や整骨院、鍼治療などいろいろとしている人もいると思います。
※人によっては「精神障害者保健福祉手帳」を持っていて、窓口負担が少なくてすんでいる人もいるかもしれません。
不安を埋めようとモノを買う
そして、最後になりましたが今回一番伝えたいお金の問題の「不安をモノで埋めようとする」です。
病気とくに精神疾患になると、いろいろな衝動にかられやすくなって浪費してしまうのと、不安な心を埋めるためにモノを買ったりしてしまう傾向があります。
私がこれまで見てきた経験上ですが、浪費癖があるとか金遣いが荒いとか、無駄な物を買ってしまうという簡単なことではないと思っています。
働けないのに物を買ってしまう
心もしくは身体の不調が不安だから買ってしまう、という衝動買い。
普通の人ならちょっと贅沢をしたり身の丈以上の物を購入して借金をしても、働いてお金を返すことができます。
でも精神疾患になると、前述しているようにそもそも仕事がまともにできずに、それに伴って収入が減るもしくはゼロになります。障害手帳を持ったり生活保護を受けていたとしても、生活必需品を買ったりするだけで精一杯だと思います。
なのに物を買ってしまう。
体調が悪くて動けないから
チヒロや私のパートナーがそうだったんですが、精神疾患で体調が悪くなるのに比例して徐々に買い物の量も増えていきました。最初は物欲が止まらずに買っているだけかと思っていましたが、実際はそうではありませんでした。
「不安」が引き金になって買っていました。
チヒロに関しては、ファッション関係の洋服やバッグ、靴の購入量がどんどん増えていました。
病気になる前はアパレル関係(洋服屋さんやスタイリストのアシスタント等)の仕事をしているくらいオシャレが好きだったので、昔からいろいろ洋服を買っていました。
でも、メンタル疾患になってからはその量が一気に増えて、家に遊びに行くと未開封の洋服や靴が山積みになっていました。何万円もするようなバッグや指輪とか、ネットで買った服がどんどん届くような状態。
「チヒロはオシャレだから」ということで納得して、チヒロの家に友達と遊びに行った時もみんなでファッションショーをして遊んだり、着ていない服を安く売ってもらったりしていました。
でも、今考えるとどこかでその散財を止めてあげるべきでした。
パートナーの散財
私のパートナーも離脱症状に苦しんでいる時の浪費はすごかったです。もちろん、当時彼は「浪費」ではなく必要な「投資」と思って買っていました。
健康になるためのサプリや健康食品はもちろんですが、体力をつけるための健康器具いろいろ(パーソナルジムを開けるレベルの器具たち)、運動する時用のスポーツウェア、あらゆるジャンルの本、元気になったら弾くためのギター、外に出られないとき用のゲーム、ハイスペックのパソコン、思い出を残すための高額一眼カメラたち。。。。
まだまだこれはほんの一部で、実際はこの何倍も買っていました。
なんで買ってたのか?体調が悪かったからです。
ファンヒーター事件
一番わかりやすい例を挙げます。4年前の冬、使っていたファンヒーターが壊れそうになったんです。その頃、パートナーの体調は絶不調で、体力低下していて冷え性も酷かったので、冬場の寒さに対してものすごく恐怖を抱いていました。
使っていたファンヒーターが壊れても、予備のファンヒーターもあるし、エアコン付ければ部屋はあったかくなるはずなのに、
「早くファンヒーターを買いに行かないと。新しく買ってもそれもすぐに壊れるかもしれないから、その予備も買っとかないと」
と、寒い冬空の雨が降っている中、遅くまで開いている電気屋さんまでファンヒーターを買いに行くということがありました。
電気屋さんの行き道でも、商品を選んでいる途中でも、そのあとでも、ずっと寒さに対して怯えていました。大げさではなく、ファンヒーターが無くなったら死ぬんじゃないかというレベルで怖がっていました。
その時は、とにかく彼が安心するためにはファンヒーターを買って帰ることが正解と思っていました。
でも、あとから考えてみると、ファンヒーターを買うことが正解なのではなくて、その不安を「ファンヒーター」ではない方法で払拭できるくらいのスキルがあればよかったと後悔しています。
大きな不安にいつも駆られているから、焦っていろんな物を買ってしまう。時期がとても長かったです。
洋服を買うことで満たす心
チヒロもおしゃれが好きだから洋服を買っていたのが、病気になってからの物欲というのは心を埋めるためだったと思います。
向精神薬のせいで体重が増えて自分の理想とする体型じゃなくなったコンプレックスを隠すため、ファッションの仕事ができなくなったけど洋服というものと繋がりを求めて、自分がまだ存在していると確認するためのもの。
今振り返るとそういうことだったのかもしれないと思っています。
家族や周囲のできること
チヒロが残したノートにも、自分自身の散財について後悔している思いが書かれていました。彼女自身、働けずに収入もない状況なのに買い物を止めれないことへの不安がありました。
当時、彼女に対して「買い物しすぎだからやめなよ」と言える雰囲気ではありませんでした。周囲からのアドバイスを聞き入れられる余裕がないからだと思います。
これは精神疾患の人とどう付き合えば良いのかの記事で詳しく掘り下げようと思いますが、アドバイスが「否定された」と捉えられる気がして、私は強く言えませんでした。
これも、今となってはとても後悔していることです。
たとえうざがられても、「買い過ぎじゃない?」の一言を言えば良かったです。そのときに一時的に怒ったとしても、それは不安からくる苛立ちだったりするからです。
冒頭にも書きましたが、病気(とくに精神疾患)になった多くの人はお金の不安にぶち当たります。
だけど向精神薬で頭も回らずに判断能力も落ちてしまって、どうしていいのかわからず焦ります。
そういう時に、「大丈夫だよ。一緒に考えよう。」と言ってくれる人がいるだけでどれだけ救われるだろう。。。
モノで埋まらないことを自覚してもらう
心の不安はモノでは埋まらないことは本人もわかっているのに、それ以外に方法は無いと思って物を買うのをやめられない。周囲も、本人のやりたいようにやらせないと怒り出すからと、見守るだけになりがちです。
でもそれは本質的な解決にはなりません。
モノでは心は埋まらないし、不安は絶対に消えません。手元のお金が消えていくだけです。
現在、私のパートナーの体調は一時期と比べるとだいぶん落ち着いていて、散財することも減ってきました。
本人が治ろうといろいろ試してきた努力の結果ですが、周囲にいる人ができるのは「不安を減らしてあげる」ことだと思います。
闘病できる環境を作ってあげる。不安そうにしていたら、何が不安なのか直接聞く。変な気を使って腫れ物扱いしない。
できることなんて限られるかもしれないけど、寄り添って、ひとりで悩まなくて良いよと言ってあげればよかった。チヒロにできなかった私の後悔のひとつです。
みなさんには今のうちにあなたの大切な人の不安を聞いてあげてほしいです。モノではなく、他人のあたたかさで不安な心を埋めてあげてください。
今日のBGM 「ポロメリア/Cocco」